昭和からの贈りもの 第2章 大正時代

 2-17.大正11年・正月・宮内写真館 1922   ・ 


家族写真 宮内写真館/大正11年


大正11年の宮内写真館の印

こちらの写真は、3歳の伯父と1歳の次男、そして両親との家族4人での記念撮影ですが、撮影は湯島天神の宮内写真館となっています。

裏には《大正十一年一月三日》と記載されていますので、お正月の記念撮影だったのでしょう。


典型的な家族4人の平和な記念撮影にみえますが、着ている物さえ変われば、現代の家族写真と変わらない感じがします。

4人とも着物姿ですが、二人が被っている帽子は【しょうちゃん帽】と言う、ぼんぼりが付いた毛糸の帽子です。

また着物の上に着ているのは、【子供前掛け】と言って、当時の子供の基本的な服装だそうです。

前掛けと言うと、現在では写真撮影の時等には外して撮影に望むものと思いますが、こうして着て写っていると言うことは、昔は子供の正装の一部として認められていたのですね。

左の次男の着ている着物の柄は、男の子らしく刀の図柄で、伯父の柄は絣でしょうか?
また足元に履いているのは足袋のようです。


この当時一般的に写真を撮るとしたら、こうした写真館で撮るか、専門のカメラマンに撮ってもらうしかない時代で、スナップ写真のように、気軽に撮れるものではなかったようです。

その為写真屋さんが撮った写真は、表紙が付き、写真館の刻印等が入った厚手の立派なものが多く残っています。

こうした写真屋さんの撮り方や、写真の納品の仕方等は現在もそのまま引き継がれているようです。

着ている物さえ変われば、現代と全く変わらないように思えるのはそういった流れがあるからなのでしょうね。


因みに、この時撮影をした宮内写真館は、この頃は名門写真館と言われていました。

オーナーの宮内幸太郎さんは数々の賞を受賞した日本を代表する写真家で、たくさんのお弟子さんが世に出ているそうです。

世界的な写真家だった土門拳さんも、当初は画家を目指していたものの、自身の才能に見切りを付け、昭和8年に母の勧めで、この宮内写真館の内弟子として入門をしたそうです。

その後土門拳さんは、こうした営業写真ではなく、報道写真の道に進む事になりますが、写真撮影の基礎は、この宮内写真館で得たものと思われます。



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