5-28.昭和10年頃・軽登山   ・ 


兄弟で登山 高尾/昭和10年頃

兄弟で登山/昭和10年頃

こちらの二枚の写真は、伯父に聞きましたところ兄弟で登山に行った時のもので、左は高尾山での一枚だそうです。

「確かに学校でもハイキングや登山に度々行ったけれど、弟達ともよくハイキングに行ったな〜。
特に高尾山は近い割りに結構歩くので、何度か行ったよ!」
との事でしたが、写真に写っているのは三男のようです。

現在でこそ軽登山の服装といいますと、まずは軽くて汗を外に出すようなウエアや、キャップに、足元も軽くてしっかりした歩き易いブーツを中心に、収納の良いザックや様々で、登山用品店も随分とあります。
が、この昭和初期の軽登山用品と言えば、写真のような大きなリュックに革靴。
そして、せいぜい杖を手にする程度のようです。
更に写真をみても判りますように、この時の服装学校行事でなくても学生服のようです。

こうした学生服は学校の行事以外にも普段から着用する事が多かったそうで、今では普段着として学生服を着て出歩く事はあまりありませんが、伯父に聞きますと、これがこの当時としては当たり前のことであり、普通の事だったようです。

確かに着物の生活から徐々に洋装に変わって行った時代ですので、ある意味では学生服等は何処にでも着て行く事ができ、丈夫で機能的で、ある意味万能なウエアだったのかもしれませんね。

そう言えば暑い日や家の近所以外の外出の写真は、学生服を着た写真が多くありますね。
それにしても、随分と大きなリュックですが何が入っていたのでしょうか?
もしかして泊まりがけだったのでしょうか?


伯父の写真の中には、登山の写真や山の写真が数多くありました。
場所は不明ですが、やはり同じように学生服にゲートル姿です。
また右上は車内で将棋をしているようです。
登山にいくまでの汽車や電車の車内では、こうして将棋をしていたようですが、なんとも不安定そうな将棋板ですね。


これらの写真が撮影された昭和10年から11年頃にかけては、国内では都市近郊の山々への軽登山ブームが起こっていたそうです。
第一次登山ブームは昭和30年代に起こったと言われておりますが、実は戦前にもそのブームがあったようです。

現在も中高年による登山ブームと言われており、健康を求めたハイキングのような気軽な軽登山から、海外の高地登山までと盛んに行われ、またブームと共に、登山用品も多種に渡って販売され、各種人気を博しているようです。

が、伯父たち少年時代の登山ブームは、日本人初のヒマラヤ登頂等もその一因ではあると思いますが、既に軍事国家として歩み始めていた事から、国民の体力増強という国策もあったようで、国をあげて登山を奨励し、その為もあって学校でも度々登山を実施していたようです。



伯父は登山やハイキングに行くときは、常にカメラを持ち歩いていたそうですが、まさに現在の私達が旅先に気軽にデジタルカメラを持って行くのと同じ感覚でカメラを持って行ったのしょうね。
そしてその時に撮影し続けた富士山や、海や湖等さまざまな景色の写真も残っていました。
ただこの時代のカメラの撮影枚数には限りがあったようですので、これら一枚一枚にもさまざまな想いが込められて撮影されたものでしょう。


こちらの六枚はそうした景色の写真の一部です。
モノクロ写真ではありますが、その時々の空や雲の様子や、素晴らしい景色が垣間見えますが、右上のような場所には是非行って富士山を眺めてみたいものです。
また海が見える写真もありますが、湯河原や箱根の峠からの景色でしょうか?
最期の写真には霧がかかっているようですが、さぞ幻影的な景色だったのでしょうね。


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